ライヴ・アルバムって‟作品としての完成度”と‟出来る限り、そのままの生々しさを残す”という両極端の狭間で葛藤しながら作られてるような気がする。
いいな、と思えるのはどっちかに極端に振り切れてるアルバムなのかもしれない。
たとえば、意外に切った貼ったして被せも差し替えもして作り込まれてるストーンズのとか、あるいはイギー、ジョニサン、テレヴィジョン辺りの音質的には難ありでグレーゾーンのヤツとか。
ライヴが行われた年から27年後に発掘されたこのザ・スターリン解散コンサートの完全版は完璧に後者だね。ミチロウが唄い切れてないところもそのまんまで。
当時、2枚組LPとして18曲入りで出た‟オリジナル”は真逆。
11曲がカットされ、曲順も大幅に変えられて。
おそらく被せ、差し替えもありで、音も綺麗目に仕上げられてた。
でも、好きだったよ、俺。
4面に分けられたレコードが順に「アザラシ面」、「魚面」、「サル面」、「ブタ面」と記述されてたのも、いかにもってカンジだったし、「コレがザ・スターリン、最後のレコード」と思って愛聴してた。これでいいんだ、これがいいんだって。
そうは言っても、矛盾するけど聴きたかった、弄らない全編が。
それで実際、聴いたらサイコーだった。
コレは当日、現場で聴いた音にかなり近い
と思う。
だいぶ前のことなんで、もしかすると錯覚かもしれない。
でも、いい。この音に記憶が塗り替えられても。
はっきり言って『STOP JAP』→『STOP JAP NAKED』よりも落差の衝撃度はこっちの方が凄い、と俺は思う。
もうオリジナル聴けないぐらいのカンジ。
オリジナルにも入ってた曲で出色なのは何と言っても初っ端の「虫」
歪んだギターの音、そして息遣いも生々しいミチロウの声。
追加された曲でいいのはイヌイジュンの気分で入ってくるバック・ヴォーカルにじーんと来る「渚の天婦羅ロック」、そして血気迫る「電動コケシ」
後者はもしかすると当日、一番印象に残った曲だったかもしれない。
こういう自分も体験したライヴの作品化って記念や想い出になるけど、それを超えた特別なアルバムだな、コレは。
そして明日、もう1枚、自分にとって特別になりそうなライヴ・アルバムを高円寺で手に入れてくる。